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文房四宝の一つ「筆」は、 「日本書紀」の推古天皇の18年(610年)3月の条に、
高句麗僧曇徴(どんちょう)が 「紙、墨の製法を招来した」と記されており、
一応これが筆、墨、硯、渡来の嚆矢とされています。
以来、文化の発展と伝承に欠かすことのできない道具として、 用途別に各種の筆が製造され、 その製造技術も進歩改良されてきました。
江戸時代も中期には、 商人の台頭とともに「寺小屋」が急増し、 庶民の間にも筆が普及し大量に使われるようになり、
江戸の筆職人の技術もさらに進歩し、 多くの江戸名筆を生みました。
江戸主流の製造法「練りまぜ法」は 元禄期に細井広沢により確立された手法で、
明治5年の学制発布と共に急速に広まりました。
関東大震災、第二次世界大戦の惨禍により、 筆職人の多くは東京を離れましたが、 東京に残った筆職人は、 高級筆の製造に活路を見出し、 技術技法の継承を図っています。
筆の穂先には山羊毛・馬毛・豚毛・たぬき毛 いたち毛・猫毛などが使われます。
中でも書道用の筆には 中国産の山羊毛が多く使われ 中でも首下、内腿部の毛が最良の毛として珍重されています。
先出造りは、筆の命といわれる穂先を造りだす作業で、 金櫛で梳きながら毛先を揃え、
毛先の無い毛や逆毛を取り除きます。
型造りは、穂の形を作り出す作業で、 毛の間のバランスを図り、 穂先の美しさを出すには高度の熟練を要します。
練りまぜは、 毛丈の違う毛を均一にまぜあわせる工程で、穂の良否を左右します。
芯立ては、こまを使って穂の形を作り出す作業で、芯の固さ、 穂先の弾力など指先の感触を頼りに毛の量を調整するものです。
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