16.江戸指物
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指物の「指す」は「差す」ともいい、物差しで板の 寸法を測り、しっかり組合わせふたや引き出しのある 箱物類を作ることをいいます。
指物の歴史は京都が長く、平安時代の宮廷文化まで さかのぼることができ、当時は大工職の手でつくられて いました。 専門の指物師が生まれるのは室町時代以降、武家生活の 中で、棚類、箪笥類、机類の調度品が増え、また茶の湯 の発達に伴い箱物類など指物への需要が増えてからのこと といわれます。
こうした指物師は、戸障子(建具職)、宮殿師みやし (宮大工)、桧物師ひものし(曲物師)などどともに大工 職から分化していったものでした。
京都の指物は、朝廷や公家用のもの、茶道用のものが 発達し、雅や侘の世界の用具として愛用されてきました。 これに対し江戸指物は、将軍家、大名家などの武家用、 徳川中期以降台頭してきた商人用、そして江戸歌舞伎役 者用(梨園指物)として多く作られ今日に至っています。 桑、欅、桐など木目のきれいな原材料を生かし、 外からは見えないところほど技術を駆使し金釘打をほど こしたりしないで作られる江戸指物には、職人の心意気 が感じられます。
切る、削る、突く、彫るという四つに集約される指物 の技には、頑固なまでの職人の個性が感じられます。
木という生き物を相手にする、この世界に「硬い」 「甘い」「とろい」「しぶい」「まろやか」「なま」など 独特の形容詞があるのは、この間の事情を物語るものとい えましょう。
渡辺 彰さんのHP
http://www.sashimono.net/