15.江戸象牙
象牙は滑らかな肌さわり、 美しい光沢と縞目模様の変化の妙と
加工に適した固さを持っていることもあって、工芸品の素材として 優れた要素を備えています。
このため洋の東西を問わず、古くから珍重され使用されてきました。
古代エジプトでは豪華な家具や装身具に象牙が用いられ、 古代ギリシャやローマでもいろいろな神像がつくられています。
また中国でも古くから用いられ、隋、唐の時代には南方との交易が 盛んになり、インドやタイから多くの象牙が輸入されるようになる
につれ上流階級の調度品の装飾などに愛用されるようになりました。
この中国の象牙彫技法が、奈良時代に伝えられたことは 正倉院の遺品により知ることができます。
象牙に細密彫刻を施した儀礼用の物差し、琵琶の撥、碁石 などが 正倉院に遺されています。
また象牙の原材も収蔵されていることから、 日本でも原材を加工していたことがわかります。
象牙とは、象の門歯が伸びたもので、 大きいものは3−4メートル、重さ40−60キログラムにもなります。
雌象の牙は細身で長く、雄象の牙はそりが強く太くなります。
象牙製品は、茶道における茶匙、茶蓋に始まったといわれ、 こうして江戸時代には象牙が広く使われるようになり、
江戸時代中期には根付け、髪飾、三味線撥などに用いられ、 武士から町人に至るまで多くの人々に愛用されるようになりました。