2012年10月6日(土)の「毎日小学生新聞」に掲載されました 「ニッポン美・伝統工芸」という連載の第6回で 「彫金」をとりあげていただきました 綺麗な紙面にしていただいて、嬉しいです
ニッポン美・伝統工芸:/6 彫金
毎日小学生新聞 2012年10月06日
金(きん)や銀(ぎん)、銅(どう)などの金属(きんぞく)を彫(ほ)り、美(うつく)しい作品(さくひん)を生(う)む彫金(ちょうきん)。金属(きんぞく)の重厚感(じゅうこうかん)と繊細(せんさい)な彫(ほ)りがあわさって、力強(ちからづよ)く輝(かがや)きます。江戸(えど)の町(まち)で発展(はってん)したのが「東京彫金(とうきょうちょうきん)」です。額(がく)や花瓶(かびん)など大(おお)きな作品(さくひん)からアクセサリーまで、生活(せいかつ)にあわせて彫金(ちょうきん)を取(と)り入(い)れてみては。【中嶋真希(なかじままき)】
◇洒脱(しゃだつ)に変化(へんか)し続(つづ)ける
東京(とうきょう)・高円寺(こうえんじ)で3代続(だいつづ)く彫金師(ちょうきんし)、小川真之助(おがわしんのすけ)さん(44)の工房(こうぼう)におじゃましました。荘厳(そうごん)な獅子(しし)が彫(ほ)られた額(がく)や、椿(つばき)のブローチ、今(いま)っぽいデザインのネックレス……。大(おお)きなものから小(ちい)さなものまでそろっていて、自分(じぶん)の暮(く)らしにあった作品(さくひん)を見(み)つけるのも楽(たの)しそうです。
彫金(ちょうきん)の魅力(みりょく)を「何(なに)もないところから生(う)み出(だ)すところ。一枚(いちまい)の金属(きんぞく)が作品(さくひん)になる。一(ひと)つ一(ひと)つ作(つく)るので、(大量生産(たいりょうせいさん)のものと違(ちが)って)町(まち)で身(み)につけた人(ひと)を見(み)かけることはまずありませんが、『愛用(あいよう)しています』と手紙(てがみ)をもらうことは多(おお)いですよ。身(み)につけて海外旅行(かいがいりょこう)に出(で)かけて、その写真(しゃしん)を送(おく)ってくれた人(ひと)もいました」と話(はな)します。
また、江戸(えど)で発展(はってん)した東京彫金(とうきょうちょうきん)は、色味(いろみ)をおさえて、シンプル。「洒脱(しゃだつ)な良(よ)さがある」と言(い)います。洒脱(しゃだつ)とは、あかぬけていて洗練(せんれん)されていること。「だからモダンなデザインが取(と)り入(い)れやすい。取(と)り入(い)れて、発展(はってん)してきたんです」
彫金(ちょうきん)は、文化(ぶんか)や流行(りゅうこう)にあわせて、時代(じだい)とともに変(か)わってきました。武士(ぶし)が勢力(せいりょく)を持(も)ち始(はじ)めると刀(かたな)などの装飾(そうしょく)が、江戸時代(えどじだい)には根付(ねつ)けがはやりました。
今(いま)も、彫金(ちょうきん)の流行(りゅうこう)は変(か)わり続(つづ)けています。
かつては、和室(わしつ)の床(とこ)の間(ま)に、彫金(ちょうきん)をほどこした花瓶(かびん)や掛(か)け軸(じく)を飾(かざ)るものでした。今(いま)は、和室(わしつ)が減(へ)ったので、彫金(ちょうきん)の飾(かざ)りも減(へ)ってしまいました。「今(いま)は、アクセサリーが多(おお)いですね」と小川(おがわ)さん。ただ、「着物(きもの)を着(き)る人(ひと)は減(へ)ったものの、今(いま)も着物(きもの)ファンは確実(かくじつ)にいるので、帯留(おびど)めも人気(にんき)です」と、伝統的(でんとうてき)なものは根強(ねづよ)い人気(にんき)があるようです。
◆歴史(れきし)
彫金(ちょうきん)は、古墳時代(こふんじだい)に大陸(たいりく)から技術(ぎじゅつ)が伝(つた)えられ、冠帽(かんぼう)などの装飾具(そうしょくぐ)や馬具(ばぐ)、仏具(ぶつぐ)などに施(ほどこ)されました。鎌倉時代(かまくらじだい)に武士(ぶし)が台頭(たいとう)すると、刀(かたな)や甲冑(かっちゅう)に施(ほどこ)されるようになりました。
江戸時代(えどじだい)に入(はい)ると、煙管(きせる)や根付(ねつ)けなど、生活用品(せいかつようひん)が増(ふ)えました。絵画風(かいがふう)の彫金(ちょうきん)など、デザインの幅(はば)も広(ひろ)がりました。このころに江戸(えど)で流行(りゅうこう)したスタイルが、「東京彫金(とうきょうちょうきん)」と呼(よ)ばれます。明治時代(めいじじだい)には、室内(しつない)に飾(かざ)る額(がく)や、帯留(おびど)めなどが主流(しゅりゅう)に。いろいろなものに応用(おうよう)できるのが彫金(ちょうきん)の楽(たの)しさです。
◆工程(こうてい)
◇額(がく)を作(つく)る場合(ばあい)
<1>下絵(したえ)を描(か)きます。
<2>たがねと金(かな)づちで、下絵(したえ)にそって彫(ほ)ります。
<3>砥石(といし)で研(と)いだら、彫(ほ)った部分(ぶぶん)を沈金(ちんきん)して、色(いろ)をつけます。
<4>細(こま)かく砕(くだ)いた針金(はりがね)で、表面(ひょうめん)のつやを消(け)します。
<5>煮汁(にじる)で煮(に)たり、重曹(じゅうそう)でこすったりを繰(く)り返(かえ)して仕上(しあ)げます。
◆彫(ほ)り方(かた)
大(おお)きく分(わ)けて、片切(かたき)り彫(ぼ)り(しゃしんうえ)=と、肉彫(にくぼ)り(どうした)=の2種類(しゅるい)があります。レの字(じ)に彫(ほ)って筆(ふで)で描(か)いたような線(せん)の質感(しつかん)を再現(さいげん)するのが片切(かたき)り彫(ぼ)り。深(ふか)く彫(ほ)った部分(ぶぶん)と浅(あさ)く彫(ほ)った部分(ぶぶん)があるので、まるで筆(ふで)でぼかしたように見(み)えます。
削(けず)りとる片切(かたき)り彫(ぼ)りとは違(ちが)って、肉彫(にくぼ)りは、金属(きんぞく)をたたいて盛(も)り上(あ)がらせて、高低差(こうていさ)で絵(え)を描(か)きます。立体的(りったいてき)な作品(さくひん)に仕上(しあ)がります。